世界で大流行中の “ラグジュアリースポーツ” ウォッチ(通称:ラグスポ)。
一部の時計では人気すぎて供給が追いつかず、二次流通(≒並行輸入品)でプレ値での取引がされています。
本記事では「ラグスポって何ぞや?」という定義の部分から、価格帯別でラグスポウォッチを紹介していきます。
そもそもラグジュアリースポーツ(ラグスポ)の定義・解釈は何か
「ラグジュアリースポーツ」という概念は、オーデマピゲが1972年に発売した「ロイヤルオーク」のPRに記載された『luxuary sports』という単語がきっかけです。
世界3大ブランドであるオーデマピゲが、ドレスウォッチといえば “金” という時代にステンレススチールケースでドレスな時計をリリースしたのです。
(発表当初は全く売れず、色物扱いされたそうです…)
ラグスポの起源に立ち返ると「高級」「ステンレススチール(SS)製」「ドレッシー(≒薄い)」を満たすこと
ラグスポの代名詞である二大巨頭「ロイヤルオーク」「ノーチラス(パテックフィリップ)」のデザインを考案したジェラルド・ジェンタという偉大な存在に時計界はあやかり、様々なブランドがどことなくジェンタデザインを模した時計をリリースしています。
あれもこれもラグスポ?という状況ですが、本質は「ステンレススチール製なのに薄くてドレッシー」であること。
これを満たしている時計は非常に少ないです。
- 高級:歴史あるブランドで100万円以上のラインを持つ(ラグジュアリーである)
- ステンレススチール製:異素材ではない(ドレスウォッチである)
- 薄い:(できれば)10mm以下である(ロイヤルオーク・ノーチラスは8mm程度)
かなり厳しい基準だと思いますが、これらを全て満たす時計は他のスポーツウォッチと明らかに装着感の良さやドレッシーさが違います。
そして、条件には記載していませんが、選定基準に「ケースサイズ40mm未満」も入れています。
これは、ケースサイズ39mmの初代ロイヤルオークが “ジャンボ” という相性で呼ばれたように、40mmを超えるケースサイズはいつの時代もドレスウォッチとしては大きいと見られがちだからです。
2024年最新版 ラグジュアリースポーツウォッチ一覧
〜50万円
モーリスラクロア アイコン 39mm
世界的なインフレによる時計の値上がりの中、良心的な価格で買えるラグスポの筆頭がモーリス・ラクロアの「アイコン」シリーズ。
厚さは11mmと少しオーバーですが、ケースサイズ39mmの展開があり、50万円以内で買えなくなる前に買っておくべき逸品だと思います。
チューダー ロイヤル
ロレックスよりも薄い時計のラインナップが多い、兄弟ブランドのチューダー。
「ロイヤル」はケースサイズ38mmの展開があり、厚さは10.4mmとラグスポの条件としては許容範囲。
50万〜100万円
ボーム&メルシェ リビエラ
価格に対して仕上げの良さが目立つ、ボーム&メルシェからは「リビエラ」をチョイス。
36mm or 39mmのケースサイズ展開もあり、厚さは10.2mmとラグスポ感が出ます。
100万円〜150万円
ゼニス デファイ スカイライン 36
36mmのケースサイズに10.35mmの厚みと、実はラグスポ要素を満たしたサイズ感のモデルがあるのが、ゼニスの「デファイ スカイライン 36」。
41mmのモデルは11.6mmの厚みがあり、ドレス感が減り少し大きめなので、36がおすすめです。
150万円〜200万円
カルティエ サントスドゥカルティエ MM
世界初の男性用腕時計として時計史に名を刻む「サントス」。
2018年によりスポーティーなラインとして「サントスドゥカルティエ」が登場しました。
MMサイズは35.1mmのケースサイズに厚さは驚きの8.83mmと、カルティエの考えるラグスポはこれだ!と言わんばかりの仕上がりです。
詳しくは実機レビュー記事も出しておりますので、そちらをご覧ください。
ショパール アルパインイーグル 36
サントスドゥカルティエの登場の翌年の2019年、ショパールがラグスポウォッチとして「アルパインイーグル」をリリース。
「L.U.C」という傑作ムーブメントを製造していることもあり、薄さの表現はお手のもの。
36mmのケースサイズの展開もあり、それでいて8.4mmの厚さからくる装着感の良さで、瞬く間に人気モデルとなりました。
IWC インヂュニア 40
2023年に復刻されて以来「インヂュニアはラグスポなのか…?」という疑問が付き纏っていました。
40mmのケースサイズに10.7mmの厚さ。
ラグスポというには大きさも厚さも少しはみ出ていますが、ジェラルド・ジェンタデザインであるという1点でラインナップ入り。
(個人的には、復刻版ではなく1976年登場時のインヂュニア “ジャンボ” の方が真のラグスポである、と考えています)
クレドール ロコモティブ
2024年に復刻した、ジェラルド・ジェンタデザインの「ロコモティブ」。
38.8mmのケースサイズに8.9mmの厚さと、現代的な解釈を加えて少し大型化したインヂュニアと異なり、完璧な復刻といえます。
限定300本(国内200本)で抽選参加できるようですが、これは大激戦になるでしょう。
ピアジェ ポロ
1979年にピアジェから登場したラグスポラインである「ポロ」。
時代に合わせて大型化していったのですが、2023年に36mmのケースサイズでダイヤ無しのユニセックスモデルが登場。
厚さは8.8mmと、薄い時計作りに定評のあるピアジェが素晴らしい傑作を創り出しました。
まだSSベルトのモデルが無いことが玉に瑕ですが、ゆくゆく登場することを期待します。
200万円〜300万円
ジラール・ペルゴ ロレアート
日本に初めてスイス時計を持ち込んだことでも知られる、古豪寺ラール・ペルゴから1975年に登場した「ロレアート」。
直近は42mmモデルしかなく、日本人の腕には少し大きすぎたのですが、ついに38mm・厚さ10mmのモデルが登場。
文字版の色は “コッパー” で、スタンダードな色が登場するのが待たれます。
ルイ・ヴィトン タンブール
2023年にリニューアルした「タンブール」。
ケースサイズの40mmはスモールセコンドと文字版のバランスを考慮したもの、厚さは8.3mmと装着感が素晴らしい、時計好きを唸らせる傑作に生まれ変わりました。
(人気ゆえにオーダーから数年待ちとのことです)
300万円〜
CZAPEK(チャペック) アンタークティック
実はパテックフィリップの前身として設立され、1800年代半ばにパテックフィリップとチャペックに分離してしばらく後に途絶えてしまいましたが、2012年にクラウドファンディングで復活したというブランドです。
38.5mmのケースサイズに10.6mmの厚さ、マイクロローターを採用した美しいムーブメントに特徴的なブレスのポリッシュ。
新時代のラグスポの仲間入りを果たした逸品です。
パルミジャー二・フルリエ トンダPF
パテックフィリップやブレゲの複雑機構を直した伝説の時計修復士、ミシェル・パルミジャーニ氏により1996年に設立された比較的新しいブランドです。
トンダシリーズはラグスポの急先鋒としてたちまち人気を博しました。
36mmの小ぶりなケースサイズに8.6mmの厚さと、装着感がとんでもなく良い素晴らしい時計です。
雲上ブランド(世界三大時計)
ヴァシュロン・コンスタンタン オーヴァーシーズ
1970年代のラグスポ黎明期、1977年に「222」を発表したヴァシュロン・コンスタンタン。
その後、1996年に初代オーヴァーシーズが発表され、ヴァシュロン・コンスタンタンの人気モデルとなりました。
個人的にどんぴしゃラグスポウォッチと考えているのが、37mmのケースサイズのライン(現行はダイヤ有りのもののみですが、過去にはダイヤ無しモデルもありました)。
41mmは腕周り15cmの筆者には大きく、復活を心待ちにしています。
パテック・フィリップ ノーチラス
ジェラルド・ジェンタデザイン、8mm台の厚さ、ケースサイズは35~42mmまで幅広く、パテックフィリップのラグスポといえば文句なしでこれ。
世界的に入手困難なため、とんでもない値段になってしまっていますが…。
オーデマ・ピゲ ロイヤルオーク
ラグスポの始祖、説明不要でしょう。
34, 37, 41mmのケースサイズ展開があり、9mm弱の厚さ。
ジェラルド・ジェンタにより生まれた、歴史に名を残す傑作。
番外編:世間的にはラグスポと括られているが、除外した時計
ロレックス全般
サブマリーナやデイトナはラグスポじゃないの!?と思った方もいらっしゃるかもしれませんが、ロレックスは “ラグスポ” ではなく、世界で最も有名な高級時計の “ロレックス” というジャンルだと思います。
実際、ケースサイズはどちらも40mm以上ですし、厚さは12mmはある。
(ヨットマスターは37mmですが、あれはマリンウォッチ・ダイバーズウォッチの括りですし)筆者の考えるラグスポの要件は満たしていないのです。
ティソ(TISSOT) PRX
リーズナブルでかっこ良く、人気急上昇中の「PRX」。
ケースサイズ・厚み共に満たしていますが、 “ラグジュアリー” の要素を満たせていないように感じます。
10万円程度で買える手軽なスポーツウォッチですが、文字版の出来はラグスポ相応であるものの、ブレスの仕上げが値段相応に見えるため、除外しました。
(アイスブルー、何度も買おうと検討しました…カッコいいですよね!)
ベル&ロス BR05
ケースサイズ40mm × 厚さ11mmが少し大きくツールウォッチ感がまだ残っており、実際のドレスシーンでの着用はギリギリ…なため、今回は除外しました。
ブレゲ マリーン
ケースサイズ40mm、厚さ11.5mmとラグスポウォッチというよりは、ドレス寄りのマリンウォッチではないでしょうか。
ステンレススチールブレスのモデルもあるので、ここは解釈が分かれるかもしれません。
A.ランゲアンドゾーネ オデュッセウス
2019年にA.ランゲアンドゾーネ初となるステンレススチール製の時計として誕生し、ラグスポに分類されることも多いオデュッセウス。
ただ、ケース直径40.5mm・厚さ11.1mmと、他のランゲシリーズに比べて少し大きくて厚い…素晴らしい時計ではあるのですが、ラグスポウォッチが欲しい!となるとこの価格帯なら元祖であるロイヤルオークを買う気がしてしまいます…。
オーデマ・ピゲ CODE 11.59
2019年、ランゲのオデュッセウスと同じ時期にロイヤルオーク有するオーデマピゲが、実に20年ぶりの新作ラインを発表。
当初は批判の渦だったというのが、ロイヤルオーク発表当時を彷彿とさせました。
これが21世紀のラグスポなのか、モードな雰囲気を携えた新しいジャンルなのかは誰にも分からず、もはや歴史に評価されるのを待つしか無いのでは、と考えています。
当初はホワイトゴールド or イエローゴールドのモデルしかありませんでしたが、ステンレススチールのモデルも増え、41mm(厚さ10.7mm)だけでなく38mm(厚さ9.6mm)のモデルも出てきました。
38mmのモデルでステンレススチールのものがまだ無いため、出てきたら爆売れ間違いないだろうと思います。
まとめ:ラグスポの要件である「高級」「ステンレススチール(SS)製」「小さく薄い」を完全に満たす時計は少ない
16個の時計を紹介しましたが、その中でも全てのラグスポ要件を満たす時計は非常に少ないです。
特にケースの厚さが10mmを切る薄い時計は作るのが難しいため非常に少なく、150万以上は出さないと買えない、という状況です。
一生物として買う時計をどれにするか、ご自身の好みと合わせて決めるのが良いでしょう。
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